藤沢の住宅街の角地、5 叉路の 1 辺に接する小さな敷地。かつて文房具屋だった建物を解体し、40 代のご夫婦がはじめる喫茶店の新築計画だった。ご要望は「この街の呼吸の一部になるような店」のひと言。
小さな飲食店では、外観を閉じすぎると "入りづらい店"、開きすぎると "意図が薄まる店" になりやすい。ここでは、その中間を探した。ファサードの 2/3 をガラス張りとし、残り 1/3 は漆喰の塗り壁に。カウンター越しに淹れるコーヒーの湯気が、角地を歩く人にうっすら見える。その湯気と、通る人の気配が、ガラス一枚を挟んで重なる関係をつくった。
照明は、席ごとに色温度を微妙に変え、均一にしすぎない。床は無垢の栗、壁は漆喰の素直な白、天井は古材の梁を現しに。カウンター 4 席 + 2 人掛け 4 卓 = 合計 12 席。店主夫妻が 2 人で回せる上限を、設計の制約として最初から共有した。
オープンから半年、近隣の住民の "日常の一部" に定着している様子を、何度か通りがかりに見届けた。建築が街の風景になる瞬間 ── 設計者にとって、これ以上の祝福はない。
48 ㎡ という小ささは制約ではなく、設計の密度を高める条件だった。厨房とホールの境界、店主の立ち位置、客の視線の抜け方 ── すべてを 3mm 単位で検討した。
カウンターの高さは 92cm。一般的な 90cm より 2cm 高い。これは店主の身長と、エスプレッソマシンの操作高を合わせた結果。客側から見ても、手元のアクションがちょうど良く見える。
照明の Ra 値(演色評価数)は 95 以上。珈琲の色合い、料理、お客様の肌色まで、正しく見えることにこだわった。電球の色温度は 2700K、音楽は 55dB 以下。"人が静かに話せる場" のための、小さな設えの積み重ね。
敷地を一緒に歩くところから。
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