曾祖父が建てた平家を、四代目となる 30 代のご夫婦が住み継ぐ ── そんなご相談を受けたのは、冬の早朝だった。現地を歩くと、土間・縁側・続き間の記憶がそのまま残っていた。構造は驚くほど健全で、大工の仕事の確かさが 78 年経っても伝わってきた。
建て替えを選ばなかったのは、ご夫婦が「子どもの頃、祖父母とここで過ごした時間を、自分の子どもたちにも感じさせたい」と話されたから。だから設計の主題は、"解体" ではなく "編み直し" とした。構造躯体の 7 割を温存し、壁だけを更新。梁・柱・土間のたたきは、傷も、時間の色も、そのまま残した。
更新したのは、断熱・気密・配管・電気といった "見えない部分"。壁の中は 2024 年基準に。しかし仕上げは、78 年前のこの家が持っていた静かな暗さと、縁側から差す穏やかな光を、あえて損なわないように抑えた。床の段差、天井の低さ、細い柱 ── 現代の住宅では敬遠される要素も、この家では "記憶の輪郭" として丁寧に残した。
竣工後、お嬢様(5 歳)が「おばあちゃんの家と同じにおい」と呟いた。新築では生まれない、時間の層。それこそが、このプロジェクトの成果物だと思っている。
既存躯体の保存率は 7 割。耐震等級は 1.5 相当まで引き上げ、現行の大地震にも十分耐えうる強度を確保した。補強金物は古い軸組に違和感なく馴染むよう、ブラックで統一。
断熱は、壁 / 床 / 天井すべてを高性能グラスウールで更新。Ua 値 0.42 W/㎡K、HEAT20 G2 グレード相当。昔ながらの "寒さ" を一切残さず、しかし見た目は 1946 年当時のまま。
給排水・電気は全面更新。一方で、銅製の古い照明金物や、竹で編んだ欄間は、洗浄して全て再利用した。
敷地を一緒に歩くところから。
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